「骨盤が歪んでるので、骨盤矯正をして欲しいのですが」

「矯正」という言葉が持つ魔力

「矯正」という言葉を聞くと、問題を一発で解決してくれそうな不思議な魅力を感じさせます。

そして、あたかも一度矯正されれば、安定してずれないということを想像させます。歯科矯正や視力矯正のように明確な結果が得られれば分かりやすいのですが、実際のところ骨盤矯正は、歯科矯正や視力矯正とは違い、安定的な結果をもたらしません。

矯正はそもそも、正しく機能していないものを正常に機能させるという目的のもとに行われるものです。歯科矯正はかみ合わせ、視力矯正は見え方のように明確にわかる機能的な違いがあります。

骨盤には様々な役割がありますが、とりわけ重要なのは、「力の伝達」「衝撃の緩衝」です。骨盤の機能を確かめる際に、この2つの機能が正常に働いていれば、骨盤が正しい機能に矯正されたと考えて良いと思います。

骨盤は上半身と下半身を繋げる中間の位置にあるため、上下左右前後様々な方向から力を受けています。その力を伝えることも必要ですし、逃すことも必要ですので、ある程度自由に動けることが重要です。

そのため骨盤矯正は、「正しい位置に骨盤を固定させる」という考えではなく、「あらゆる動きに対応できるような自由度の高い状態にすること」であるべきです。機能的に整った状態であれば、客観的に誰が見ても美しいと感じることができます。

産後の骨盤矯正

産後の体型の変化は歪みが原因とよく言われますが、本当の原因は「筋力低下」と「バランス感覚の低下」です。

歪みは結果であって原因ではありません。妊娠中は、お腹が大きくなることで重心が前に大きく変化します。その変化に対応するため、無意識に様々な方法でバランスを取り、動作が偏ることで筋力のバランスが悪化していきます。

その結果として、姿勢や関節の位置が変化するので「歪み」と表現される状態になります。そのため、産後の骨盤矯正は筋肉や関節を緩めたり伸ばしたりする調整などよりは、筋力トレーニングやバランストレーニングが重要になります。

トレーニング無しに骨盤矯正は不可能と言えますが、逆を言えば、適切なトレーニングさえしていれば勝手にバランスの良い状態への矯正されていきます。

マッサージや電気治療、関節を操作してもすぐ戻ってしまったりするのは体に対するアプローチの順番が違うからです。まずトレーニング。そのあとに緩める治療。多くの場合はこの順番が大事になります。本当の意味での骨盤矯正の実際は、地味で地道です。

一回で「ポキッ」とか「バキッ」とか関節を動かしたり、マッサージやストレッチを受けているだけで矯正されれば楽で簡単で良いんですが、残念ながらそんなことはありません。

矯正されたような感覚を求めるか、正常な運動機能を求めるかは人それぞれだと思います。ただ、後者を求めている方が前者を選んでしまわないように、ご本人が正しい情報を知って、目的に合わせて納得して選択できるようになっていただけると良いのかなと思います。

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