「体幹トレーニング」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?
最近はスポーツの他、健康面においても体幹の重要性が言われてきていますが、なんとなく体幹トレーニングを行っているケースも多いのではないでしょうか。
例えば一般的に体幹トレーニングと聞くと、
- プランク
- ダイアゴナル
- サイドブリッジ
- クランチツイスト
このようなトレーニングを思い浮かべるのではないかと思います。
もちろんこういった方法を最終的には行っていくのですが、このようなトレーニングは言わば全身運動です。
全身運動の場合、弱くなっているところはそのままで、働きやすい筋肉が弱い筋肉を補ってしまいます。体幹のコアを働かせたいのに、意識的に働きやすい表層にある大きな筋肉や、腕や足に負荷が行ってしまいます。
そのため、トレーニング初期ほどうまくいかず、怪我など繋がってしまうこともありますので、一般的な体幹トレーニングを行うためには段階を経て行っていく必要があります。
まず行うべきは、
意識で使うことができないインナーマッスルを自然に使えるようにすることです。
体の中心深くある筋肉ほど意識では動かせませんので、一般的な体幹トレーニングを行う前には、自然と使える状態にしておかねばなりません。
よくある体幹トレーニングの間違いは、使いたい場所を意識したり腹圧を意識すること。
実は「意識」をしやすい筋肉は体の末端や表層にある筋肉でグローバル筋と呼ばれます。
グローバル筋を意識したトレーニングを行うと、体の深くにあるローカル筋(インナーマッスル)は抑制されてしまいます。
体の軸を支えるインナーマッスルの代わりに、表層にあるグローバル筋が過剰に働くことでパフォーマンスが上がらないだけでなく、怪我につながることもあります。
コアのインナーマッスルの機能が低下すると、腹圧が低下しコアスタビリティは働かなくなります。
腹圧が低下した状態で行う
体幹トレーニングのデメリット
体幹の軸が働かない中で行う全身運動を続けると、このようなデメリットがあります。
- 体の重さや張り凝りを感じやすくなる
- 体が硬くなり関節の動きが小さくなる
- 大きな怪我につながりやすくなる
一つ一つ確認していきましょう。
疲労感や筋肉の張り凝りを感じやすくなる
本来無意識に働くべきコアマッスルがサボり始めると、腹圧が低下してコアスタビリティが機能しなくなります。
つまり、体の中がフニャフニャになります。
体の中で自律的に支えてくれる筋力がサボれば、その代わりに他の筋肉が働かなくてはなりません。
意識的に動かせるのは体の表層や末端にあるグローバル筋ですから、そういった筋肉が必要以上に頑張らなくてはないらないため、疲労感を感じやすくなります。
体が硬くなり関節の動きが小さくなる
関節を曲げ伸ばししたり、大きな力を出すのはグローバル筋の仕事です。
グローバル筋が適切に働くためには、体の中にあるローカル筋がコアや関節を安定させてくれる必要があります。
コアや関節固定筋がサボると、本来関節を動かすためのグローバル筋が固定するためにも使われてしまうため、大きなパワーを持つグローバル筋によって関節は固まってしまい、スムースな曲げ伸ばしができなくなります。
腱などに大きな負担がかかり続け、痛みの原因にもなります。
大きな怪我につながりやすくなる
ローカル筋、コアマッスルがサボり、インナーユニットが仕事をしなくなると、体の軸が不安定になります。
その不安定性を補うために意識的に動かせる大きな筋肉に負担がかかり続けることで、疲労感、張り凝りは溜まり続けていきます。
人体は、その負担をいくらでも溜め込める訳ではありませんので、限界までくると当然破綻します。
ある日突然、痛みが起きる訳ではなくて積み重なった蓄積疲労によって大きな怪我につながります。
その根底には、無意識に働いているローカル筋、コアスタビリティの機能低下が影響しています。
腹圧が正常に働いた体幹トレーニングのメリット
コア(腹圧)のコントロールして体幹トレーニングを行えると、このようなメリットが得られます。
- パフォーマンスが上がる
- 負荷を分散し怪我を予防できる
- 実践的な体の使い方になる
パフォーマンスが上がる
ローカル筋が機能し、コアスタビリティが適切に働くと、体の軸や関節が安定します。
運動と支点となる関節が安定すると、てこの原理が効率よく働くようになるため、より大きなパワーを引き出すことが出来るようになります。
歩く、走る、飛ぶ、もち上げるなど、基本的な運動パフォーマンスが向上します。
負荷を分散し怪我を予防できる
関節が安定し、コアスタビリティが働くことで得られるのは、パフォーマンス向上だけではありません。
より少ない力で大きな力を引き出すことが出来るようになりますので、全身をバランスよく使えるようになりますのでコンディションを良好に保てます。
負担が一箇所に集中することがなくなるため、蓄積疲労が減り、怪我を未然に防ぐことが出来るようになります。
実践的な体の使い方になる
本来人間は、体を動かすときにいちいち意識などを用いません。
考えることなく無意識に運動が調節され、目的を果たせるようになっています。
人間の持つ基礎的な活動をスムースに行うためには、運動を起こす時に全身の筋骨格、関節が適切に働くことが必要になります。
動かすときに意識してるようでは間に合わないのです。
プログラムが自然に遂行されるように、身体機能が自然に使える状態になっていると、いつでもどこでも楽に簡単に体を動かすことが出来るようになります。
コアを活性化する
体幹トレーニングの方法と手順
体の軸を安定させるローカル筋、インナーマッスルを活性化する方法を解説します。
こういう方は無理をしないでください
- ドクターから運動を止められている方
- 安静にしていても痛みがある方
- 足に強い痺れや麻痺がある方
- 背中から落下させるように寝転がっていくと床への跳ね返りの反動を利用して起き上がりやすくなります。腕の振りを大きく利用してゆりかご、起き上がり小法師のように繰り返しましょう。
- 意識を持たずに反動を積極的に利用して行うことです。腕の曲げ伸ばしや、床からの跳ね返りの反動を利用して「楽」に「簡単」に「強く」「早く」行うのがポイントです。
本来人間が体を動かす時には、筋肉や体幹を意識したりはしません。意思に伴って自然に体が反応して無意識に目的を果たすために動かしています。それはトレーニングを行うときでも同様で、意識をすればするほど人間本来の運動の目的からずれていってしまいます。
このように「やりやすい」体操は、心地よくスムースで効率的な運動が行え、心理的にポジティブな「快情動」を引き出すことができ、脳の報酬系という神経メカニズムが働きます。報酬系の「快」を利用した運動は、運動学習を強化し、体の強調的な活動を引き出すのに必要なメカニズムです。
よくある一般的な体幹トレーニングの多くは全身運動ですので、前提としてバランスよく身体機能が出ていなければトラブルを起こすこともあります。
まずは正常な身体機能を引き出してから行うことで、本来の目的に沿った正しい体幹トレーニングができるようにまります。例えば筋力増強を行う場合にも、その準備として行っておくと効率良いトレーニングが行えるようになります。
まとめ
スポーツ選手、アスリートなどが積極的に取り入れている「体幹トレーニング」ですが、普段、運動習慣が無い一般の方がいきなり行っても、あまり効果的は得られないかもしれません。
効果が無いだけならまだしも、実際は怪我につながってしまうことも多々あります。
物事には順序と段階があります。「有名人がやってるから大丈夫。」と言う訳ではありませんので、いきなり真似してしまうことにはちょっと注意が要ります。
正しく効果を積み上げていきたければ、まずは人間本来の機能を引き出すことです。
それからの方が確実で、楽に簡単に取り組んでいくことができます。