猫背による弊害
脊柱は体を横から見た時にS字カーブを描き、それは生理的弯曲と呼ばれ人間が二足歩行を行う上で重要な働きを担っています。およそ33個の背骨(一部癒合しています。)が積み上げられるようにして構成されます。
連続した背骨を、軟骨、靭帯、筋肉で補強しスプリングのような役目を果たすことで、体重の10%前後ある重い頭部の重量による衝撃を分散、緩衝することが出来ます。そのため、立つ、歩く、座るなど人間の活動において欠かせない機構となっています。
猫背とは、背中の部分に相当する胸椎部分の弯曲が、通常より大きくなり後弯が強調されて背中が丸まります。その背中が丸くなってしまう様子が、猫の背中のように丸々となることから猫背と呼ばれています。猫背の状態になると、頭部の重心が本来の重心線から前方にズレ、生理的弯曲の限界を超えてしまいます。
その結果、僧帽筋や脊柱起立筋群など頭頚部の筋肉や関節に大きな負担となり、肩こりをはじめ頭痛など多く症状を引き起こす原因となるのです。さらに、身体的な影響だけでなく、自信が無く頼りなさそうに見えたりすることで、他人に対してもネガティブな印象を持たれやすくなる傾向があります。
猫背の本当の原因は体幹の筋力低下です
多くの治療院が、口をそろえるかのように猫背の原因は「骨の歪み」と言います。正直、何でもかんでも骨の歪みのせいにするのは良くないことだと思っています。
骨の歪みという表現のすべてが間違っているわけではありませんが、
なぜ骨は歪むのでしょうか?
この質問に答えられるセラピストは意外にも少ない印象があります。
実は、歪みは結果であって原因ではありません。関節を動かす力をモーメントと言いますが、重力や筋力など作用によるモーメントの不均衡でバランスが崩れた状態こそが、歪みを引き起こします。
猫背の場合、骨盤周囲の下部体幹、肩甲骨周囲の上部体幹の特定のインナーマッスルが筋力低下を起こすことで、弱くなった筋力の代わりに働く筋肉が余計に緊張する影響で背中が丸くなるような猫背の状態を作り出します。
猫背矯正の本当の原因は骨の歪みではありませんので、背骨ををいくら操作したところですぐ戻ってしまいます。そのため治療の順番で優先すべきは弱くなった体幹のインナーマッスルのトレーニングを行うことです。骨の矯正を行うのはその後になります。
猫背は適切で段階的なプロセスを経て取り組むことができれば、何歳からでも改善していきます。