腱鞘炎の正体

一般的に腱鞘炎と認識されている症状は、RSI(反復性ストレス障害)という状態にあります。RSI(Repetitive Strain Injuries)は、反復性のストレス障害を意味する言葉です。部分的に繰り返される、低負荷高頻度の運動を続けることによって発症する痛みや炎症です。
手や腕は日常的に多くの仕事をしています。机で行う細かい作業から、育児、家事、重いものを運ぶような重労働までこなします。意外かもしれませんが、手や腕に起こる障害の多くは、重労働で重いものを持ったりするよりも、小さく軽い動きを繰り返すような方に多く起こっています。
産後の腱鞘炎
出産における一連の流れの中で、オキシトシンというホルモンが重要な役割を果たします。オキシトシンには、骨盤帯の筋肉に作用し陣痛を促進したり、乳腺の周辺に含まれる筋肉へ作用し母乳の分泌を促進します。
しかし、オキシトシンの筋収縮作用は、特定の部分だけに作用するわけではなく、その働きは全身に及びます。
筋肉、腱には、特に関節付近でのスムースな運動機能を保つための腱鞘が存在しますが、骨盤などと同様にホルモンの影響を受けることで収縮し、腱鞘と腱が狭窄し摩擦抵抗が増え炎症を引き起こしやすくなります。
さらに産後は赤ちゃんの世話などで下を向くことが多く、頸椎に疲労が蓄積していきます。
頸椎から手に繋がる神経に負担がかかることで、より手首に痛みを感じやすい状態かつ、休息の時間も取れないため慢性化する傾向があります。
悪循環に陥ると、慢性化・難治化していきます
十分に休息が取れず回復の機会が与えられないと、筋・筋膜は癒着し繊維化していきます。慢性的な阻血状態に陥ると、痛み、痺れ、脱力感、疲労感を引き起こし、そこから回復できなくなります。
改善するためには生活習慣を変えるのは当然ですが、癒着・繊維化した筋・筋膜を引き剥がし、回復に必要な程度の微小損傷を患部に与えることが有効です。
症状やメカニズムを理解し、根気よく取り組むことで、RSIで生じる症状は難治性の症状ではなくなります。
代表的な手や指の痛み
ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)
母指側の手首部分を通過する長母指外転筋、短母指伸筋腱とそれを包む腱鞘の狭窄によって生じる炎症です。握るような動作や、手首の動きに伴って痛みを感じ、炎症期には、安静時であっても痛みを感じることがあります。ホルモンバランスの関与によって女性に多くみられ、近年ではパソコンでの手や指の酷使によって発症リスクは増えています。
バネ指(弾発指)
指の曲げ伸ばしの途中で引っかかり、一定の角度を超えたところから弾けるように曲げ伸ばしができるような症状です。女性に多く、母指、中指、環指によく見られます。指の屈筋腱が炎症や変性によって肥厚し、腱鞘との摩擦抵抗が増えることによって起こります。炎症が起きてる場合は消炎、鎮痛処置を基本とし、慢性期には腱鞘を広げるようなリハビリを行うことで寛解します。
母指CM関節症
母指は5本ある指の中で可動域も大きくパワーもあります。母指CM関節は、母指の付け根にあり動きや力を伝える支点になるため、母指の力に頼るような癖があるとCM関節症の発症リスクが増加します。関節が摩耗し変形性関節症に繋がったり、ドケルバン病や隣接する関節症とも併発することもあるので注意が必要です。
コリ固まった筋膜・筋肉を解きほぐして組織の代謝と再生を促進します。血流を増加させることで、自然治癒力を最大化し、回復を手助けします。