色々なところで治療を受けたけど、なかなかスッキリしない股関節痛…
- 股関節を抱えて胸につかない
- 深く曲げるとズキっと痛む
- 動いていると痛みがマシになる
骨が変形していたり先天的な問題もあることも多いですが、一通り病院などでも治療を行い、それでも改善しないというのであれば少し視野を広げてみることも大切です。
股関節痛の比較的多いケースの一例としては、反り腰に由来するものが多く見られます。
正確には、反り腰が直接的な原因ではありませんが、腰を反らせる多裂筋という筋肉が固まり緊張することで、骨盤の後ろにある仙腸関節という関節の動きを制限してしまうことによって起こる股関節があげられます。
仙腸関節は本来動きずらい関節ですが、わずかに遊びがあります。その遊びがなくなることで神経が刺激され、腰痛と合わせて股関節付近に痛みを広げたり、周辺関節に余計な負担をかけることで原因のはっきりしない痛みを起こすことがしばしばあります。
仙腸関節の役割としては上半身と下半身を繋ぎ「力を伝える」ことと「力を逃す」こと。この相反する二つの働きが重要になりますが、仙腸関節がロックするとこの二つの機能が正常に働きません。
結果的に、余計な力が周辺にかかることで、お尻の痛みや背中、首の痛みなど問題の範囲が拡大していきます。
変形性股関節症の診断を病院で受けている場合、リスク因子として幼少期の先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全といった骨の形状に特徴があることが多く、先天的な股関節の浅さを補うために骨盤が前傾しやすく無意識的に反り腰の傾向が見られます。反り腰は多裂筋の慢性的な緊張状態をつくりやすくなります。
多裂筋が慢性的に緊張する理由
多裂筋の慢性的な緊張状態を作る要素はたくさんあります。
- 日常的に座る時間が長い
- 生まれつき靭帯が柔らかい
- 歩行習慣がない
こういった持って生まれた「骨格的な特性」に加え、「生活習慣」「行動習慣(癖)」によって負担が蓄積していきます。
生まれつきの骨格の問題が関わっていると、本来必要な運動パターンを獲得出来ずに成長してきてしまうため、意識のない中、知らず知らずに負担を溜め込んでしまい「特になにかをしたわけではないけど、なぜか痛くなった」ということが起こります。
多裂筋は骨盤・体幹下部を体の後ろ側から安定させる重要な筋肉ですが、その多裂筋と対になって働く、骨盤の前側を支える「腸腰筋」の筋力が落ちていると、その腸腰筋の働きを補うために多裂筋の負担が増してしまいます。
なぜ腸腰筋は弱る?
適正な運動パターンを体が理解していれば、日常生活の中で自然に機能する腸腰筋ですが、そう言ったことを学ぶ機会はまずない上、現代の生活様式ではこの筋肉は非常に衰えやすく、体の中心近くかつ奥深くにあるため感覚的に捉えらることすらできません。
つまり、弱ってることを自覚できません。
そのため先で挙げたように、持って生まれた「骨格的な特性」からくる「生活習慣」「行動習慣(癖)」によって使われにくい筋肉というのも相まって、言わば「沈黙の筋肉」になってしまうことが多いです。
当然ながら、腸腰筋の機能が落ちると、その働きを補うのは多裂筋だけではありません。
大腿筋膜張筋、大腿四頭筋、梨状筋など、周辺の筋肉が過剰に働くことでパンパンに緊張するため、腰痛、股関節痛、膝痛、殿部痛、坐骨神経痛といった症状も出現し問題を拡大、複雑化させてしまいます。
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超長期間になると、神経障害や骨の変形などにも発展していきます。有名な「腰部脊柱管狭窄症」もこの関係性が破綻することによって起こることが多いです。
慢性的な股関節痛を改善するには
仙腸関節由来の股関節痛であれば、多裂筋の緊張を抜いてあげるだけでかなり症状は軽減します。
ただし、多裂筋の緊張は「腸腰筋の弱さを補っている」という側面があるため、まずは腸腰筋の機能を改善してあげなければ、いくら緩めても元に戻ってしまいます。
そのため、根本的に症状をコントロールするには同時並行でをリハビリを進めていく必要があります。
あまり知られていませんが、腸腰筋の筋力が戻るとそれだけで多裂筋の緊張は抜けていきますので、まず真っ先に多裂筋を緩めるというよりは、腸腰筋を狙い撃ちした体操やトレーニングを行うことで多裂筋の緊張を落とし、その後、鍼治療や衝撃波と合わせて、仙腸関節のモビリゼーション(関節運動を促す)ことで仙腸関節は正常な動きを取り戻します。
すべての股関節痛が仙腸関節のせいという訳ではありませんが、大なり小なり全身に影響があることがほとんどですので、当院では必ず確認をする重要な要素になります。
もし骨盤周辺、腰、お尻、股関節、太もも、膝といったところに慢性的な症状が続いていて、病院などで継続的に治療を受けてるのにあまり良くならないという場合には「多裂筋は緊張していないか?」「仙腸関節は固まっていないか?」「仙腸関節がしっかり働いているか?」といったことを確認すると良いかもしれません。