加齢による
運動機能と筋力の低下
猫背、背中が丸まる、ぽっこりお腹といった姿勢や見た目の問題だけでなく、何気ない日常の動きの中で、運動機能の低下によって生活に支障がでていませんか?
- ふらつく
- 思うように歩けない
- つまづく
実際に転倒して怪我をしてしまったりすると、怪我が治るまでにさらに運動機能は低下して、なかなか思うように回復しないだけでなく、誰かの介助が必要になってしかもしれません。
この背景にあるのが、サルコペニア(筋力減少症)や、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)です。
ある日突然、筋肉や運動機能が衰えていくことはありません。
現代の便利になった社会生活で身についた生活習慣や行動習慣が、自分の認識がない中で、筋力を低下させ、関節は固まり、運動のバリエーションを減らしていきます。長い時間をかけて衰えた運動機能は、活動量の低下につながり、社会との関わりが減っていくことにも発展していきます。この状態をフレイル(虚弱症)と言います。
サルコペニア、ロコモティブシンドローム、フレイルは、少子高齢化の現代において健康寿命に向き合うための重要なテーマであり、実際に悩むようになってから対応するよりも、心身が元気なうちから取り組むことが生涯に渡って生活の質を高めることに繋がります。
サルコペニア、ロコモ、フレイルとは
サルコペニア、ロコモティブシンドローム(ロコモ)、フレイルは、それぞれ独立した概念ですが、相互に関係している健康問題です。
サルコペニアは、主に筋肉量と筋力の減少を主に示し、進行するとロコモやフレイルのリスクが高まります。
これらは高齢の方に起こりやすい健康問題で、サルコペニア➡︎ロコモ➡︎フレイルと、連続的に進行することがよくあります。
サルコペニア
(筋肉減少症)
サルコペニア(筋肉減少症)は、加齢に伴った筋肉量および筋力の減少を指します。
主に、筋肉量低下と機能低下を伴い、自立的な日常生活動作や歩行運動機能に大きな影響を与えます。加えて、ロコモティブシンドロームやフレイルの要因になります。
ロコモティブシンドローム
(運動器症候群)
ロコモティブシンドロームは、ロコモという表現で浸透していますが、運動器にまつわる移動障害を指します。
運動器(骨、関節、筋肉、神経など)の障害により、歩行の速度やバランス能力が低下し、日常生活での移動が困難になることが特徴です。
フレイル(虚弱症)
フレイル(虚弱症)は、肉体的、精神的な弱さに加え、社会的な自立生活が困難な状態を示す概念です。主に高齢者に特有の状態であり、サルコペニアやロコモティブシンドロームの症状を伴うことで、自立生活に障害を抱え、活動量が低下します。
健康状態のバランスを崩しやすく、転倒、入院、要介護状態への移行リスクが高まります。
ロコモ、フレイル、サルコペニアの原因
- 高齢化社会の進行
日本を含む多くの先進国では少子高齢化が顕著です。日本人の平均寿命は、女性:87.09歳、男性:81.05歳(2023年)で、医療技術の進歩などによって過去最高を更新し続けています。長寿命化によりサルコペニア、ロコモ、フレイルのリスクも高まっています。 - 活動量の低下、運動不足
日々便利になる現代社会においては日常の活動量が減り、慢性的な運動不足に陥りがちです。それは都市部に限らず、車社会の地方においても同様です。それらはロコモやサルコペニアのリスクを高めます。 - 食生活と嗜好品の影響
高齢者においてはタンパク質の量と質が不足しがちで、筋肉量が減少しやすくなり、サルコペニアのリスクを高めます。また、長年の偏食や嗜好品の影響においてはロコモ、フレイルのリスクを高めます。 - 社会的な関わりの減少
活動量の低下に伴ってコミュニケーションや社会的なつながりも減りがちに。精神的な健康がサルコペニア、ロコモと併せて損なわれることでフレイルのリスクが高まります。 - 医療技術や介護の質の向上
医療技術の進歩により平均寿命は延びていますが、現代社会の環境要因により健康寿命は追いついていません。長寿命化により慢性疾患や生活習慣病のリスクが上がると、サルコペニア、ロコモ、フレイルも発症しやすくなります。
予防は早ければ早いほど効果的
サルコペニア、ロコモティブシンドローム、フレイルは、将来的に多くの方が直面する問題ですが、なるべく早い段階から向き合うことで症状を発症させないことは可能。
たとえ発症しても進行を遅らせたり、改善しやすい状態にするため、常にコンディションを整えるという考え方を持てると良いかと思います。
これらの症状には「これをやれば解決できる」という単純なものではなく特効薬もありませんが、効率的かつ効果的な方法はあります。
本来これらの予防には、運動習慣をつくり活動量を維持すること、不足しがちな栄養素をしっかりと補給すること、積極的に社会とのつながりをもつなど、幅広いアプローチが必要になりますが、特効薬を求める前に、まずは「立つ、座る、しゃがむ、歩く」といった日常生活動作を丁寧に行うことから始めてみましょう。
単なる「立つ、座る、しゃがむ、歩く」ですが、されど「立つ、座る、しゃがむ、歩く」です。
これら日常生活で大量にこなす動作は、適切かつ機能的に行えていると非常に効果的な運動になり、生きている以上、膨大に繰り返すゆえに体の機能を勝手に高めてくれます。ただし、これには正しい知識が必要です。
正しい知識を身につけて、その経験をもとに丁寧に生活することができれば、サルコペニア、ロコモティブシンドローム、フレイルは自然かつ無自覚に予防されていきます。