インナーマッスルの間違い、誤解、勘違い
インナーマッスルに関する情報は、「意味がない」「効果がない」「嘘」「胡散臭い」といった意見も多く見られます。
確かに「インナーマッスルを鍛えるだけでは効果がない」という指摘は一理あります。しかし、それは「インナーマッスルそのものが無意味」なのではなく、「間違った方法でアプローチしている」ことが原因です。

「インナーマッスルは意味がない」と言われる理由

目に見える変化が少ない
インナーマッスルはアウターマッスル(表層の大きな筋肉)とは異なり、鍛えてもすぐに見た目が変わるわけではありません。例えば、ジムでトレーニングを続けても「腹筋が割れた」「脚が太くなった」といった即効性のある変化は感じにくいでしょう。このため、「筋トレをしても変化がない=効果がない」と誤解されがちです。
「鍛えること」自体が目的になっている
インナーマッスルは、体幹の安定や姿勢制御を担う「機能的な筋肉」です。しかし、多くの人は「インナーマッスルを鍛えること」自体を目的にしてしまっています。
例えば、プランクやドローインのようなトレーニングがよく推奨されますが、本来のインナーマッスルの役割は「無意識下で適切に働くこと」であり、意識的に鍛えようとすることが逆効果になることもあります。

インナーマッスルは「鍛える」のではなく「使える状態にする」ことが本質なのです。

神経系のコントロールが軽視されている
筋肉は単独で動くものではなく、神経系によって適切にコントロールされることで機能します。
特に、APA(姿勢制御のための筋活動)や神経振動子(オシレーション)の役割が軽視されている場合、いくらインナーマッスルを鍛えても機能的な動作には繋がりません。
神経系のバランスが乱れることで、「インナーマッスルが働かない→アウターマッスルが過剰に緊張する→動作の質が低下する」という悪循環に陥るのです。

本当に問題なのは
「インナーマッスルが機能しない」こと
「インナーマッスルは意味がない」のではなく、「インナーマッスルが適切に機能していないこと」が問題なのです。では、インナーマッスルが機能不全に陥ると、どのような影響があるのでしょうか?

- 腹圧が適切に維持できず、腰痛や猫背が悪化する
- 姿勢が崩れ、動作の安定性が低下する
- スポーツパフォーマンスが低下し、怪我のリスクが増加する
- 神経系のバランスが乱れ、ストレスや疲労感が抜けにくくなる
例えば、視線を固定する固視によっても腹圧が低下することがわかっています。
これは、脳がストレスを感じることで交感神経が過剰に働き、適切な呼吸パターンが崩れてしまうためです。このように、「意識的に鍛える」のではなく、「無意識下で正しく働く状態を取り戻す」ことが、インナーマッスルにおいて最も重要になります。
インナーマッスルを
「本当に使える状態」にするために
1. 意識しすぎないこと
「インナーマッスルを意識して鍛えよう」と考えること自体が、神経系にストレスを与え、逆効果になることがあります。意識的にコントロールしようとするほど、脳は負担を感じ、結果的にインナーマッスルが適切に機能しなくなります。
2. 呼吸と腹圧を整える
インナーマッスルの機能には、横隔膜・腹横筋・骨盤底筋の連動が不可欠です。しかし、多くの人は呼気が疎かになり、適切な横隔膜の動きを引き出せていません。例えば、長時間のデスクワークによって胸郭が固定されると、呼吸が浅くなり、結果的に腹圧が適切に維持できなくなります。「息を吐くこと」に意識を向けるだけでも、インナーマッスルの機能は大きく改善されます。
3. 神経系のバランスを整える
筋肉を適切に機能させるためには、神経系のコンディションを整えることが不可欠です。特に、オシレーション(神経振動子)や引き込み現象(エントレインメント)を活用することで、インナーマッスルの活性化が促されます。これは、強い刺激を加えるのではなく、神経のリズムを整え、自然な動作を取り戻すことが重要であることを意味します。
「インナーマッスルは意味がない」は誤解
「インナーマッスルは意味がない」と言われる理由の多くは、誤解や間違ったアプローチによるものです。
インナーマッスルは、意識的に鍛えるのではなく、無意識下で適切に機能させることが本質です。そのためには、以下の視点が重要になります。

- 無意識の動作の中で機能させる(意識しすぎない)
- 呼吸と腹圧を整え、神経系のストレスを減らす
- 神経系のバランスを調整し、適切な動作パターンを取り戻す
これらを理解し、適切なアプローチを取ることで、「インナーマッスルは本当に必要か?」という疑問に、確かな答えが見えてくるはずです。
