手の痛み・腱鞘炎の本質と改善アプローチ
手や指の痛みの代表的な疾患である腱鞘炎は、日常生活の中で頻繁に発生する問題です。特に繰り返し行われる動作によって負荷が蓄積し、炎症や痛みが生じるケースが多く見られます。
腱鞘炎の根本的な理解と正しい対処を知ることで、痛みを軽減し、再発を防ぐことができます。

腱鞘炎の正体
RSI(反復性ストレス障害)
腱鞘炎の症状は、単なる炎症ではなく、RSI(Repetitive Strain Injuries:反復性ストレス障害)という概念で説明されます。これは、繰り返しの小さな負荷が特定の部位に蓄積し、結果的に炎症や組織の損傷を引き起こすものです。
- 低負荷高頻度の動作が主な原因(例:キーボード作業、スマホ操作、楽器演奏)
- 腱や腱鞘の滑走性が低下し、摩擦が増加
- 血流の低下により、回復が追いつかず慢性化
- 痛みが蓄積し、神経が過敏になることでさらに悪化
私たちの手や指は、重労働よりも、むしろ小さく軽い動作を繰り返すことで負担が蓄積します。パソコン作業、スマートフォンの操作、育児など、何気ない日常動作の中で徐々にダメージが蓄積され、痛みが現れます。
腱や腱鞘は、関節付近でスムーズに動くための滑走機能を持っていますが、使いすぎによって摩擦抵抗が増し、腫れや痛みが発生します。この状態を放置すると、炎症が慢性化し、組織が硬くなり、可動域の制限が生じることがあります。
産後の腱鞘炎
ホルモンの影響と神経負担
産後の女性に多い腱鞘炎は、単なる使いすぎだけが原因ではなく、ホルモンバランスの変化が大きく関係しています。
- オキシトシンの分泌により筋肉や腱が収縮しやすくなる
- 腱鞘の摩擦抵抗が増加し、炎症を起こしやすくなる
- 赤ちゃんの抱っこや授乳により、手首・指への負担が増大
- 睡眠不足とストレスにより、神経の感受性が高まる
- 頸椎の負担が増え、手や腕の神経伝達が乱れやすい
出産時に分泌されるオキシトシンは、骨盤をはじめとする筋肉や腱の収縮を促進する作用を持ちます。このホルモンの影響は、手や指の腱鞘にも及び、摩擦抵抗が増して炎症が起こりやすい状態になります。
さらに、産後は赤ちゃんの世話による姿勢の崩れや頸椎への負担が加わります。頸椎の状態が悪化すると、手や腕に伸びる神経の伝達がスムーズに行われなくなり、痛みを感じやすくなるだけでなく、治癒が遅れる原因にもなります。
慢性化・難治化する理由
組織の癒着と神経負担
腱鞘炎が長引く最大の要因は、回復の機会が十分に与えられないことです。
- 筋膜や腱の癒着:繰り返しの負担によって、筋膜や腱が硬くなり、組織の動きが制限される。
- 慢性的な阻血状態:血流が滞ることで、組織の修復が遅れ、疲労物質が蓄積。
- 神経の過敏化:長期間の痛み刺激により、神経が過敏になり、小さな動作でも痛みを感じやすくなる。
回復には、単に休息を取るだけでなく、癒着した組織を適切にリリースし、血流と神経の伝達を改善することが必要です。
腱鞘炎を根本から改善するアプローチ
腱鞘炎の治療では、単なる消炎・鎮痛では不十分なことが多く、神経の働きを正常化し、組織の滑走性を回復させることが重要です。
そのために、
- 筋膜リリース:癒着を解放し、滑走性を改善
- 神経の調整(神経系のコンディショニング):神経の過敏性を抑え、回復を促す
- 拡散型体外衝撃波:深部組織への刺激による血流促進と組織再生
- 適切な運動療法:正しい動作を学び、負担を分散
特に、神経系のコンディショニングと拡散型体外衝撃波は、腱鞘炎の治療において有効なアプローチとして注目されています。
- 神経系のコンディショニングでは、神経の興奮を鎮め、炎症部位への負担を軽減。これにより、痛みの感受性を下げ、回復を促します。
- 拡散型体外衝撃波は、患部の血流を改善し、組織修復を促すことで、慢性的な炎症の解消をサポートします。
これらのアプローチを取り入れることで、腱鞘炎は再発を防ぎながら根本改善へと向かいます。
腱鞘炎の痛みや違和感が長引いている場合、単なる安静ではなく、根本的なアプローチを取り入れることが鍵となります。