技術の伸び悩みや痛みの原因は、身体の基礎機能にある

- レッスンのたびに同じ場所が痛む
- 技術の精度がなかなか上がらない
- 意識しないとすぐ演技が崩れる
- 体の動きがぎこちなく、無駄な力が入る
このような状態に陥っているなら、単に練習不足や技術不足で片付けるべきではありません。
練習量を増やすことで改善しようとしても、無理に続ければ逆に悪循環に陥り、精神的にも疲弊してしまいます。バレエやダンスのパフォーマンスを高めるには、まず身体の根本的な機能を見直すことが重要です。
柔軟性と剛性のバランス
バレエやダンスは高い柔軟性と正確な動作を求められる競技ですが、それらは単なる「柔らかさ」だけでは成り立ちません。
実は、柔軟性と剛性(安定性)のコントロールができることが、技術の向上に直結します。

すべてのスポーツや芸術表現には特有の技術がありますが、それらの前提として人間の基本的な運動機能が適切に発揮されていることが不可欠です。立つ・歩くといった動作が本来の形で機能しないまま、競技特有の技術を上乗せしようとしても、基礎の土台が不安定では習得は難しくなります。
例えば、
- 関節の可動域が不足していると、別の関節が過剰に動きすぎる
- 筋力のバランスが悪いと、一部の筋肉が余計に働いてしまう
- 無意識の調整ができないと、常に意識的に動きを制御しようとしてしまう
このような状況が続くと、練習の質が低下し、痛みやパフォーマンスの低迷につながります。
負担が溜まるメカニズム
身体には「代償」という無意識の防御反応があります。体が意識せずにバランスを取ろうとする結果、余計な負担が特定の部位に蓄積し、痛みやパフォーマンスの低下を引き起こします。

代償動作とそのリスク
- バランス能力が低いと、意識的に制御しようとして余計な力みが生じる
- 柔軟性が不足すると、他の関節が余計に動いてカバーする
- 筋力が足りないと、他の筋肉が過剰に働いて補う
特にバレエダンサーは、もともと柔軟性とバランス能力が高いため、筋力の問題をカバーしてしまい、それが隠れたリスクとして潜在しています。この状態を見過ごしたままでは、適切な基礎力が発揮されず、技術習得に時間がかかり、怪我のリスクも増大します。
「回転」と「静止」に強い
基礎運動能力を作る
バレエやダンスでは、動きの流れと静止の美しさが重要です。そのためには、動きの中で柔軟性と剛性のコントロールを適切に行うことが求められます。
- しなやかに歩く・走る、ダイナミックに跳ぶ、細部の動きを滑らかに制御する
- 回転時に軸がぶれずに安定し、静止した際に余計な揺れを出さない
- 柔軟性に頼るだけでなく、適切な剛性を発揮し動きを支える

これらをスムーズに行うためには、意識的にコントロールするのではなく、無意識に適切な調整が行える状態を作ることが必要です。
表現者である以前に、
人間としての身体を見直す

「もっと技術を磨こう」「動きを意識して改善しよう」
こう考えること自体は悪いことではありませんが、その前に、そもそも身体の基礎機能が適切に働いているかを見直す必要があります。
表現者である前に、まず人間としての基本的な運動機能を整えること。
それが、痛みの改善や技術の向上につながり、結果として表現力の向上にもつながります。焦って技術を追い求めるのではなく、まずは自分の身体を知り、基礎機能を取り戻すことから始めてみましょう。
