怪我について関心のある高校生からこのような質問をいただきました。
怪我をしない体づくりについて教えて下さい。
自分が臨床を行なっていく上での考え方を中心に回答させていただきましたが、世の中いろんな考え方があるので、色々なことを体感しながら学んでいっていただければと思います。
まず、怪我はおおよそ2つに分かれます。
- 突発的な衝突、転倒などによる大きな力がかかることによる「外傷」
- 繰り返しの蓄積疲労による「障害」
どちらにも大きく影響を及ぼすのは関節の強度です。関節の強度は、靭帯とインナーマッスルによって決まりますが、靭帯は鍛えることはできません。持って生まれた靭帯の強度は変えられませんし、怪我で緩んだ靭帯も強化できません。
そのため、関節を安定させるにはインナーマッスルを鍛えるほかありません。
最近では筋肉を肥大させて体を大きくするのが流行っていますが、インナーマッスルが弱ければ筋肉の重さに関節が耐えられず、蓄積疲労で腱や靭帯にストレスが蓄積し障害に至ります。
元メジャーリーガーのイチロー選手はマーリンズ時代のインタビューでこう言っておられました。
「持って生まれたボディバランスは崩してはいけない。」
その通りだと思います。筋肉は脂肪に比べて20%程度重い組織です。パワーを生み出すには必要ですが、自分の持っているボディバランスが必要とする以上に肥大した筋肉は錘(おもり)です。
球技など手足の先端を加速させるスポーツにおいては、遠心力によって生み出すパワーと引き換えに関節に相当の負荷をかけることになります。
関節を支えるインナーマッスルが強靭であれば支えることができるかもしれませんが、現実にはインナーマッスルの状態を常に安定した状態にするのは不可能です。
そうは言ってもインナーマッスルは重要
筋肉や腱に蓄積疲労が溜まった状態は、ちょっとした転倒や衝突、スタート、ストップ、跳躍などで負荷がかかった際にあっけなく損傷します。
怪我を絶対に防ぐことはできませんが、リスクを減らす方法としては、やはり関節運動の支点であるインナーマッスルを強化することです。
人体の関節運動の支点になるのは、足部、膝、腰、肩甲骨、肘、下部頸椎です。最近知られている体幹は、腰腹部と肩甲骨を指します。インナーマッスルは意識的に使うことはできません。インナーマッスルを使っていると自覚することも出来ません。
立ったり、座ったりであっても、それがどのような動きであっても体を動かすためには、体の軸を安定させる必要があります。
それは意識では間に合いません。
インナーマッスルは無意識に働くことが何よりも重要で、アウターマッスルより素早く反応し関節を安定させることが求められるため、アウターとはそもそも役割が異なります。
意識では使えないインナーマッスル。それをしっかりと働かせるためには専門的なトレーニングとコンディショニングが必要になります。筋肉を大きくするようなトレーニングをする場合でも、最初に行うのはインナーマッスルのトレーニングです。
怪我を防ぐ体づくりは、
- インナーマッスルの活性化
- 柔軟性
- バランス感覚(運動イメージ)
まずはこれらが重要になりますが、取っ掛かりはインナーマッスルです。ここが無いと始まりません。
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